2017年8月21日月曜日

アガサ・クリスティー「複数の時計」(1963)

アガサ・クリスティーの「複数の時計」(THE CLOCKS, 1963)を読む。
橋本福夫訳の1976年ハヤカワ文庫版の1994年第36刷。108円で購入。

自分、高1ぐらいのとき学校の図書館にあったアガサ・クリスティのハヤカワ文庫のこのシリーズで何冊か読んだ。当時の自分はこのイラスト表紙にワクワクした。
最近になってそれ以来でクリスティを読み始めた。以前の自分には意味がわからなかったことが今なら少しは理解できるかもしれない。

この作品の主人公・コリン・ラムくんは英国の諜報機関員で海洋生物学者。1963年の作品ということで東西冷戦真っ最中であることを頭に入れて読む。古本屋の奥へと進むと上司のいる部屋があるとかおしゃれ。

住宅地の真ん中で、死体を発見し取り乱しながら家から飛び出してきた速記タイピスト娘と出会う。

盲人の老婦人の家で発見された身元不明の中年男性の刺殺体、仕事だとおびき出されたタイピストが死体の第一発見者。コリンと刑事が周辺の家を聴きこみ開始。

半分ほど読んでようやくポアロ探偵登場。安楽椅子探偵どころか特養老人ホーム探偵?ってぐらいにポアロも老いた。友人であるコリンくんに聞き込み捜査のしかたをアドバイス。この作品ではポアロが他のミステリー作品を評論する場面が出てくる。

老いてもポアロはスーパー名探偵。話を聴くだけで誰も想像できない犯人を指摘する。ポアロはびっくりするほど出番がない。最後だけで決定的な仕事をする。

タイトルから複雑なアリバイ崩しかと想像していたのだがまったく違った。
現場にあったすべて1時間ほど進んだ4時13分を指す複数の置時計の意味!? 
こいつがあんまり意味なくて笑った。てか、タイトルが全然合ってないw

犯人は意外だが、コイツは十分怪しいとは思っていた。クリスティ女史の強引なチカラワザの度合いがすぎる気もする。読者は「あぁ、そう…」とテンション下がるかもしれない。書評でイマイチと判断下してる人の多くは真相に納得できていない?

終わり方はおしゃれ。あんまり説明してもくどくなるし。

これ、Amazonとかのレビューで低評価だったので心配していた。だが、杞憂だった。読んでる途中も面白かったし、最後まで読んでみて十分な満足感があった。

クリスティの他の作品を何冊か読んでいる人には十分にオススメできる。クリスティはカーやエラリーよりも話がわかりやすい。筆致にあまり無駄がない。評価の高くないこいつでも満足できたということは、クリスティは自分に合っていそうだ。今後どんどん読んでいく。

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