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2017年8月12日土曜日

W.アイリッシュ「暁の死線」(1944)

ウィリアム・アイリッシュ(William Irish 1903 - 1968)の「暁の死線」(DEADLINE AT DAWN, 1944)の稲葉明雄訳1969年創元推理文庫版の1976年第9刷がそこにあったのでカゴに入れた。
ウィリアム・アイリッシュの本を初めて読むのだが、アイリッシュはコーネル・ウーリッチと同一人物だったって初めて知った。

以前仕事で工事を請け負って勝手知ったる屋敷に侵入し現金を盗んだ電気工の男、きっと夜が明けるとバレて警察に追われる…と後悔。あてどなくさまよい歩いて深夜のダンスホールへ。男とダンスをして歩合をもらう職業ダンサーの女と出会う。

この前3分の1を占める男女の打ち明け話シーンに至るまでのアイリッシュの筆致と会話がとてつもなくハイセンスでおしゃれ。
この二人、若者の心を蝕む大都会ニューヨークでたまたま出会ったのに、出身地がまったく同じ!で意気投合。
男はぼんやり愚鈍な印象だが、女が5年の殺伐ニューヨーク生活で心を病みまくり、スレまくり。上京なんてするもんじゃない。

男は女の説得で屋敷に現金を返しに忍び込むと、そこに死体!w さらにピンチな状況。
ヤバイ、このままだと朝になるとバレて容疑者にされてしまう!→夜明けまでに自分たちで犯人を見つけて解決するしかない!と、深夜のニューヨークの街を捜索。この発想が今の日本人からするとちょっと想像しにくいw 

ニューヨークは1940年代から眠らない街だった!多くの人々が2時3時4時に起きていて酒場も薬局も開いている。へぇ、と驚く。

非論理的な当てずっぽうで遺体と部屋を調べ犯人像をプロファイル。怪しいとにらんだヤツを付け回すのだが、これがもう読んでいて明らかな無駄足捜査の無駄シーン。この描写がとても長い。なんかコメディーっぽい展開。

都合のいい展開にやや疑問を持ちながら読んでいるとやがて事件解決。そしてふたりは故郷へ帰るバスにギリギリ飛び乗る。冒頭からわずか5時間ほどのストーリー。一気に読み終わる。

これは推理小説とはいえない。期待していたほどのサスペンススリラー感もない。ちょっとした一夜のファンタジー的ドラマ。正直、自分としてはそれほど気に入ってもいない。

2 件のコメント:

  1. 「幻の女」「夜は千の目をもつ」「黒衣の花嫁」etc タイトルが素敵。
    翻弄され、殺されるのが分かっていても愛し続ける主人公と、殺した後、彼を愛していたことに気が付く悪女。こんなのがアイリッシュ=ウールリッチ。
    金もない、教養も無い。強くもない。最底辺で足掻く人ばっかりでヒーローもエリートも出てこない。この人のサスペンスは微かな希望と無力感で出来ている。文章が詩的で抒情過多タイプなので短編ほど良いです。創元からは6冊の短編集が出ていて、なかでもボクシング小説が最高です。
    私は、長編では切なさの極北!「喪服のランデヴー」と、けなげな可愛いヒロインが魅力の「黒い天使」が好き。
    この人の本はあまり外れがないので、BOOKOFFで見かけたらぜひ手に取ってみてください。

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  2. 実はもう「幻の女」は読みました。
    チャンドラーとアイリッシュとどっちを読もうか迷ってアイリッシュを取ったのですが、アイリッシュは自分と合っていそうです。今後探していこうと思います。

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