2017年11月2日木曜日

松本清張「数の風景」(1987)

松本清張「数の風景」(1987 朝日新聞社)という本がそこにあったので購入。100円。
松本清張の作品はいつも棚を眺めて次に何を読もうか考えているのだが、この本の存在を今まで知らなかった。

設計士の板垣は、大正期に閉山したまま放置されている石見銀山を観光地にする夢を持つ地元有志・守屋に請われて、遊歩道などの設備をつくるための測量と見積もりの下見に訪れる。

板垣は、行く先々で目撃し同じ温泉宿に泊まっていた謎の女が、数を数えることに執着するニュメロマニア(計算狂)ではないかと推測する。(ここ、ぶっちゃけ唐突)

鄙びた温泉宿で、自称画家の矢部という自殺志願者の中年男と出会う。どうやらこの本の主人公はこの矢部(偽名)こと谷原。東京で不動産仲介業と出版業に失敗し借金を抱え、死に場所を探して温泉地を転々としていた。

この谷原が温泉で聞いた話から、あることを思いつく。守屋の妹の元旦那が浜田の運輸業の社長なのだが、状況から判断して妹はすでにどこかで死んでいるのでは?死体は坑道のどこかに隠されているのでは?
そして、送電線鉄塔を見て電力会社から金をせびる地権者代理ビジネスを思いつく。

自動車メーカーの技術部門に帯同してオーストリアを視察に行ってる板垣、数字を異常に気にする女、電力会社を脅す谷原、ドイツ・オーストリアの石畳、地元運輸業の社長、自動車メーカーのテストコース内に取り残された建物、それらすべてが一体どう結びつくのか?よくわからずイライラしながら終盤へ。谷原が謎の失踪。

この本はハズレだったかな…と思いながら最終章。一気に面白くなってくれた。松本清張の作品はどれもラストが秀逸。多くを語らず効果的に怖い。展開がリアルにありそう。
松本清張が好きでこれをまだ読んでいないという人にはお勧めする。

0 件のコメント:

コメントを投稿