2018年1月19日金曜日

アガサ・クリスティー「青列車の秘密」(1928)

「青列車の秘密」(田村隆一訳 1982年版ハヤカワ・ミステリ文庫)の1990年第14刷も手に入れた。100円。
THE MYSTERY OF THE BLUE TRAIN by Agatha christie 1928
たぶん新潮文庫版では「ブルートレイン殺人事件」となってると思う。15歳ぐらいの時に読んだはずなのだが、面白かったという記憶がない。

今回、ハヤカワ版で読み返すことで、面白さがわかるかもしれないと期待してじっくり読み始めた。
読み返してみて、15歳の自分がまったく理解できなかったであろうことがわかった。内容を1ミリたりとも覚えていなかったw

アメリカの大富豪の令嬢と、借金だらけの貴族の夫、その恋人のダンサー、そして、セント・メアリ・ミード村で偏屈老婆の話し相手を10年続けていたら巨額の遺産を受け継いでしまった女。たぶんみんな30代中ごろ。
それぞれの事情が書き連ねられて、ロンドンからパリを経由しニースへ向かうブルートレインへ乗り合わせる。

大富豪の令嬢が首を絞められ顔面を殴打された状態で、コンパートメント内で死体となって発見される。
犯人は偶然乗り合わせた夫か?(巨額の遺産を相続することになっている)
侯爵を名乗るいかがわしい男か?偶然乗り合わせたエルキュール・ポアロが捜査に乗り出す。

有名な「オリエント急行の殺人」みたいなものだろうと予想してたのだが、あまりミステリーという感じはしない。前段が長い。

半分までは小説として、まあ、読める。面白くなってくれそうな予感はした。
だが、後半はポアロが何をやっているのか不明。苦心惨憺まったく当てずっぽうに方々を歩いてる感じで、ダラダラ続く。読んでいてしんどい。つながりも見えてこないし現在地がわからずイライラ…。

最後にポアロから聴かされる真相も、「あ、そう…」って感じ。
犯人は予想外だけど、細かいややこしい部分は後半になると忘れてるし、読書中に定期的に驚くような興奮するような要素がない。自分は読み終えての爽快感を感じなかった。不人気作なのも納得。
もうちょっとコンパクトにすらすら読めるようにしてくれたら…と思った。

この作品はクリスティ女史が「アクロイド殺し」を書いた翌年にカナリア諸島で描かれたもの。人気流行作家としての技量と自信が文体から垣間見えるのだが、作者の苦心も感じた。

日本人としてはロンドンとパリ、リヨン、ニースの距離感や、1920年代のフランス上流階級のこともよくイメージできない。読んでて困った。
よほどクリスティーを読み進めたという人が読むべき1冊。

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