2018年2月22日木曜日

アガサ・クリスティー「ホロー荘の殺人」(1946)

アガサ・クリスティー「ホロー荘の殺人」(1946)の1977年版ハヤカワ・ミステリ文庫(中村能三訳)の2002年第42刷を手に入れた。100円。
THE HOLLOW by Agatha Christie 1946
実はこれ、15歳ぐらいのときトライしたのだが、途中で挫折して読まないまま放っておいてその後どこかへ逝ってしまった。今こうして買い戻して読み進めている。

クリスティ女史にとって長編37作目。恋愛小説作家としての野心を強く感じる作風。
冒頭から3分の1は各登場人物たちの独白、そして会話が延々と続く。こいつが英米文学に特有の、ぜんぜん頭に入り込んでこない文体。

15の自分にはまったく意味を理解できなかったであろうことが今よくわかる。
少年の読者にはもっとも向いていないクリスティ作品だと思う。

3分の1読んでやっと事件発生。医者がプールサイドで銃撃され血を流して倒れてる。傍らにはリヴォルヴァー拳銃を持って呆然と立っている妻。その現場に招待されたポアロが登場して困惑。

この作品でのポアロはまったく控え目。人によっては「ポアロ、いらなくね?」とまで言われている。
それはつまり、この物語に登場する男女たちの愛の物語としての完成度が高い。

海外ミステリ作品は登場人物リストが冒頭に書かれていることが多いのだが、この作品はアンカテル夫妻以下はすべて「ホロー荘の客」としか書かれていない。え?みんなどんな間柄なの?意味が分からず大混乱。
英国の貴族って従妹同士で恋愛してんの?!庭で拳銃を試し打ちに興じる?

会話がタメ語なので、何歳ぐらいなのか?どちらが年上なのか?その辺がまったくわからない。読んでいてかなりストレスがたまった。家系図も載せてほしい。

弾丸が確かにその拳銃から発射されたものかどうかは旋条痕を調べればわかるにしても、妻ガーダの硝煙反応も同時に調べればすぐ状況がわかるんじゃね?と思った。この時代の英国では一般的でないの?とモヤモヤした。

クリスティの作品としては読み手を選ぶ作品かもしれないと思った。
しかし、ミステリ要素はオマケみたいなものとはいえ、ラスト5分の1は十分に驚いたし面白く感じた。殺された医者は実はいいやつだったんだな。
そんな真相が?!と、サスペンス要素のある恋愛ミステリー映画を見終わったかのような気分。

0 件のコメント:

コメントを投稿